こっそり茶２８

 　
今日も小話をUP〜♪
GH（＊滝林につき注意）

　

 

＜月が見える＞　

「何をなさってるんです？」

真夜中のベランダに椅子を持ち出し惚けている滝川に呆れて訊ねるはリン

突如聞こえたその声に滝川は特に動じる事もなく答えを返す

「んー、起きたのか？ ちょっと風に当たってただけだ」

リンの方を見る事もなく空に視線を預けたままの姿に

一体何が？ という興味が３割、おかしくなったのかと心配が３割

そして自分に意識が向けられない事への苛立が４割

静かにベランダに足を進めたリンは風にそよぐ滝川の髪に触れる

そしてその冷たさに瞳を細めた

「ちょっと、ですか？」

リンの訝しげな視線に滝川は苦笑する

「．．．．今日は中秋の名月だから惹き込まれてたのかもな」

「月に？」

「そ、月に。女神様は気紛れなのさ」

そう言って戯けるように笑った滝川の肩をリンはそっと抱き込む

「こんなに冷えるまで？」

「今日くらいは多めに見てくれや」

「嫌だと言ったら？」

意外なリンの言葉に滝川は驚いて目を見張った

未だに空に向けていた視線を下に戻せば

少し憮然とした顔をしたリンと目が合った

「リン？」

「．．．嫌だと言ったら、どうなさいますか？」

あぁ、そうか．．．これはきっと拗ねているのだ

判り難いったらない

が、悪くは無い

「そうだなぁ．．．．見逃してくれる気にさせてみるかな？」

「どうやって？」

瞳を細めて笑う滝川にリンは重ねて問い掛ける

もう答えなど判っているだろうに

 

お題配布元『VOID』