こっそり茶２９

 
まるマ（コンユ）

 　

＜傷痕＞　まるマ（コンユ）

「．．．．．痛かったよな」

「昔の事です」

俺の脇腹の残る傷痕を目にしたユーリはゆっくりとそこに触れる

あなたがそんなに悲しそうな顔をする必要はないのに．．．

そう言った所であなたは納得してくれない事は判っているから

俺はユーリの手を止める事はしなかった

そっと優しく、すべてを癒すように傷跡に触れる指先

それだけで俺は生きてゆける

「大げさな」とあなたは眉を顰めるだろうか？

いや「安上がりな奴」だと苦笑するかもしれない

そんな些細な事さえ幸福だと感じられる日がくるなんて

昔の俺ならば考えられなかっただろう

今の俺がいるのは＜ユーリ＞あなたのお陰なんですよ

すべてあなたが与えてくれたものなんです

だから俺は腕でも命でもあなたに捧げましょう

いらないと言われる事は判っています

それでも俺は

あなたに己の全てを捧げる

それが俺の生きる．．．．否、生きている証なのです

「コンラッド」

ただ名前を呼ばれるだけでも

その瞳に自分の姿が映っただけでも

それだけで幸福感に満たされる心

堪らず頬に手を伸ばせば、ふわりと微笑むあなた

万感の想いを篭めてただあなたの名を．．．

それだけで伝わる事を知っているから

「ユーリ」

 

 

お題配布元『VOID』