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GH(ナル麻衣未満) 



 


<滑るつま先>

熱っ!!
そう思った時には既に遅かった。
薬缶の注ぎ口から出る湯気の熱さに慌てて引っ込めた手は、見事に薬缶の取っ手に引っ掛り、結果ガシャンっと大きな音を立てて薬缶が床に転がる。
当然薬缶の中身も床にぶちまけられている訳で、今更どうしょうもない。

「はぁ.....折角沸かしたのに」

ぼーっとしてた自分が悪いのだから仕方が無い。
最近やけにこういう事が増えた気がする。
某所長殿に言わせればいつもの事だと言われるだろうけど、そういう意味じゃない。
学校でもオフィスでも、そして家でも1人になる時間ができてしまうとつい考え込んでしまう自分が居る。
考える必要なんてないのに.....
そう言い聞かせてもその次に瞬間にはまた考えている自分に嫌気が差す。
私が好きなのはジーン。優しい笑顔が好きだったの。
もう逢えないと思った時に本当に悲しかった。
じゃぁナルと逢えなくなると思った時は悲しくなかったのかと聞かれれば答えはNo。
でもあの時は双子だなんて知らなかったから.......
そこまで考えて麻衣は大きく首を横に振った。
また考えてる。余計な事を考える前に目の前の惨状をなんとかしなければ。
そう、未だ床には薬缶と大量のお湯が零れたままなのだから。
雑巾とバケツを取りに行こうと足を踏み出した瞬間、お湯に足を取られて勢い良く転んだ。

「いっ...たぁ..........もうやだ」

何も考えたくなくて麻衣は泣いた。
好きだったの。
本当に好きだったの。
優しくて心の中が温かくなる綺麗な笑顔だったの。
逢える事が嬉しくて、逢えないと寂しくて、別れる時は悲しくて.....
笑えば良いと思った。
夢だけじゃなくて、現実でも笑えば......
嫌いじゃないよ。
だってどんなに厳しくても厭味ったらしくても本当は優しい事を知ってるから。
笑わないナルも好きだったの。




COUNT TEN.(配布)より「微エロでお題 part.2」



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